【NORI COLUMN vol.11】ダイバーシティーを生きる!

先月、宮城県仙台市のメディアテイクで行われた「3.11の向こう側 仙台シンポジウム」に参加してきた。

花とアートで再生復興プロジェクトの企画したシンポジウムで、〈この地球災害の地から世界へ、文化や歴史へ変遷する地球と人のありようをアートで発信する〉という考えに共感したさまざまなジャンルのパネリストが参加していた。

その中でも人類学者の竹村 真一さんと森を作る活動をされている作家でナチュラリストのC・W・ニコルさんの対談がとても興味深かった。

C・W二コルさんの生まれたイギリスのウェールズ州の森には39種類の木しかないが、日本の山には1500種類の木があり、日本に来た時にその豊かな森に圧倒されたという。そして、北に流氷があり、南にサンゴ礁があるという多様性の宝庫である唯一の国が日本であるというお話をされていた。

また、竹村 真一さんの話では、この地球は奇跡的な水の惑星、あるが故、動く自然としての地球の生命活動を通して、適応して生物は暮らし続けてきた。30年前からやっと地球にプレートテクニクス(地球の表面は岩盤で構成され、その複数の岩盤が変動する)という考えが確立さてれたという。地球自体が常に変動していることがようやく科学的な研究やテクノロジーの進歩によって実態がつかめるようになってきた。地球は常に動き続けるものであるという当たり前のことにあまりにも無自覚であったということを私たちはあの震災によって改めて自覚することになったと。

そして、気候変動期によって起こった人類の革命期があり、農耕革命➡都市革命➡精神革命➡産業革命➡科学革命という歴史の中で、それらの革命があったのはすべて”寒の戻りの時期”と言われている気候変動の時期であったという。

 

新たな”寒の戻りの時代”はもうすでに始まっている。

動き続ける地球という生命の中でどのように共存し、共進化してゆくのか。

 

地球の歴史の中で、今の時代は地殻変動のひとつの流れに過ぎない。まだまだ未熟な人類の歴史だが、祖先は厳しい時代に知恵を絞って、適応しながら生き延びて今の時代にまで生命は繋がれてきた。気候によって変動する時代だからこそ、深く考え、知恵を絞って、その中から、新たな創造性が生まれ、技術も育ってゆくのかもしれない。そんな時代に突入している現在であるからこそ、この変動期を乗り切って、いかに「不都合をいかに受け入れてゆくのか」が課題でもある。

 

このお二人の対談の中で頻繁に出てきた言葉があった。

ダイバーシティ。

これは生物多様性のことを指す。

ダイバーシティ=多様性には可能性があるという。

 

日本の風土性の豊かさの中には、この多様な生き物の連鎖によって養われてきた土壌や風土や環境に強く影響され、それらによって培われた日本人の情緒性豊かな感受性が育まれてきた背景が日本文化にはあるのだろう。日本の「古事記」などは、その自然の持つ豊かさとその恵みとを神話という形で伝えようと書き記したものだと言える。

自然の営みによって生まれた肥沃な土地を人間たちが手を加えることで、時間をかけ自分たちの暮らしを発展させ、デザインしてきた。

 

今年もたくさんの自然災害が世界中で起こった。

災害は大変な被害をもたらすことは事実である。

しかしながら、自然の営みという観点から見ると台風は海水を巻き上げる力があり、撹拌された水の中に地底からたくさんの微生物が巻き上げられ海が、シャッフルされることで海水中にたくさんの栄養がいきわたるシステムは自然にとってはなくてはならないものでのあると。

変動は、常態であることを常に意識すること。

それを契機に目覚める精神性があり、そこからさまざまな知恵が結集してあらたなテクノロジーやデザインが生まれてゆくと信じたい。

人口減少を目の前にした日本においても、多くの外国人たちが日本に定着してゆくこともひとつのダイバーシティを形成する上での自然な流れなのかもしれない。

このお二人の対談を聞いていたら、もう一つの時代の切り口として変動し続ける地球を肯定して、そこから適応してゆく技術や進歩というものの新たな可能性というものもあるのではないだろうかというささやかな希望を感じた。長い進化の中、生きてきた先人たちに習いながら、創意工夫しながら適応しようとする知恵やたくましさが人間自身には備わっているのではないかと。

自然災害によって覚醒した部分から、災いと恵みをいかにとらえていくのかが、今を生きているひとりひとりの意識に託されているように感じる。

文明においても文化においても人が想像すること・創造することがとても重要な役割りを担っている時代だとも言える。

そんな時代の中で精神性の現れとしての表現の持つ可能性というものをもっと探ってゆきたいと思う。なにか原点回帰してゆくのかという予感を感じながら・・・。

髙橋 典子

画家/ライター

1970年、岩手生まれ、宮城県亘理町在住。

2004年から個展活動開始。
個展、グループ展多数。

Horizon(水平線・地平線)をテーマに、日常の中、自己が感じたリアリティーを色彩に置き換えた半具象的な平面作品をミクストメディアで製作。

宮城県をベースとし、関東・関西でも展示。

2016年親かめ子かめにて個展「自然形象~Human as a part of nature」開催。

2016年、2018年、海外遠征グループ・宙色Japan「日仏交流展SUMI」(Espace Japon/フランス・パリ)に参加。

文筆作業として、河北新報・夕刊「まちかどエッセイ」にて連載。
(2016年10月から2017年2月)
また、2014年1月から、ブログ「My Horizon」を開始。
絵の製作のことや日々、感じているモノゴトを綴っている。

”描くことと書くこと”に喜びを感じながら創作活動を行っている。

http://noriko-takahashi.hatenablog.com/