【NORI COLUMN vol.02】ふたつのピラミッド

このギャラリーを出ると大きな窓から、あるものが見える。

商業施設が立ち並ぶ中に小さなガラスのピラミッド。

初めて見た時は、なぜにピラミッド?と頭かしげた。

この中には、地下鉄の駅へと続く階段があり、多くの人々が利用している。泉区市民にとって、このピラミッドは、日常風景の中に、溶け込んだものとなっているようだ。

このギャラリーを立ち上げた墨象家の亀井 勤氏の呼びかけに集まった作家たちによる仙台発信の海外遠征作家集団・宙色JAPAN”日仏交流展SUMI”に参加し、2度にわたるフランス・パリでの展示に参加させて頂いた。

日本文化の継承と墨の持つ表現の多様性を軸とした展示を行った。

フランス人たちの日本への興味は尽きない。

会場になったギャラリーエスパスジャポンは、展示スペースと日本文化のさまざまな教室を行っている場所でもある。自分で着物を着ることができるという金髪のマダムが、「私は行書より、楷書の方がいいわ」などと話しながら、墨のワークショップに参加してくれたり、小さい子供たちが墨によるライブペインティングに見入ったり、ささやかな日仏交流が連日、行われていた。

展覧会の空いた時間に憧れのルーヴル美術館へ行った。

その敷地内にある賛否両論で話題になったガラスのピラミッドも見ることができた。思い思いに写真を撮ったり、眺めていたり、多くの観光客で賑わっていた。

美術館の中へ入る時、外にあるピラミッドの真下を通る。その時に見上げたピラミッドから降り注ぐ光のきらめきは美しく新鮮で、しばし足を止め見上げていた。

帰国してから、改めて見た泉中央のガラスのピラミッドとルーヴル美術館のガラスのピラミッドを勝手に重ね合わせ、親近感をもって眺めるようになってしまった。

この泉中央にあるピラミッドのことを調べてみると、1990年代、仙台副都心計画により、当時、ミッテラン大統領が行っていたパリ大改造計画で行われていた最新のデザインであったパリのグランプロジェという建築を借用したもので、やはりルーヴル美術館の中庭を模しているらしいかった。

このことを知って、2つのピラミッドが、パズルのピースのように繋がったような気がした。

スケール感はまったく違うけれど、2つのピラミッドというランドマークがなんとなくこのギャラリーとパリとを結び付けてくれるささやかな象徴のように思えてならない。

髙橋 典子

画家/ライター

1970年、岩手生まれ、宮城県亘理町在住。

2004年から個展活動開始。
個展、グループ展多数。

Horizon(水平線・地平線)をテーマに、日常の中、自己が感じたリアリティーを色彩に置き換えた半具象的な平面作品をミクストメディアで製作。

宮城県をベースとし、関東・関西でも展示。

2016年親かめ子かめにて個展「自然形象~Human as a part of nature」開催。

2016年、2018年、海外遠征グループ・宙色Japan「日仏交流展SUMI」(Espace Japon/フランス・パリ)に参加。

文筆作業として、河北新報・夕刊「まちかどエッセイ」にて連載。
(2016年10月から2017年2月)
また、2014年1月から、ブログ「My Horizon」を開始。
絵の製作のことや日々、感じているモノゴトを綴っている。

”描くことと書くこと”に喜びを感じながら創作活動を行っている。

http://noriko-takahashi.hatenablog.com/