久しぶりのお茶会、
久しぶりの松島。
久々にちょっとおめかしして、歓び勇んで、寒風の中、向かった先の瑞巌寺。
晴天でも、さすがに寒かった一月の末。

瑞巌寺の参道から少し歩き、振り向くと門の間から海が見える。
冷たく澄んだ空気に晴天の光がこぼれ落ち、遠く水面のきらめきが鮮やかに目に映った。

 

あれ?ここって、こんなに明るかったっけっ?
震災以前、本堂までの参道は、薄暗く鬱蒼とした大木の木々が立ち並んでいた。

その奥には、凝灰岩がむき出しの状態になっていて、至る所に大きな穴が掘ってある。
塔婆、五輪塔、供養場として使われていたこの洞窟群もこの寺の見どころのひとつでもある。
どんなことがあったのだろうか…と想像力を掻き立てるような独特の雰囲気がある場所だ。

しかし、そんな瑞巌寺の参道も津波でかなり被害を受けた。参道の両側にあった数多くの樹木たちも塩害の被害を受け、本数もかなり減ってしまった。
木々が減ってしまった分、明るく開けた参道は依然とは違った明るい印象になっていた。

瑞巌寺周辺は、地理的に凝灰岩の岩肌が取り囲み、その様子はさながらヨーロッパの要塞のような作りでもある。

 

宮城県松島市にある瑞巌寺。

伊達 政宗ゆかりの寺院でもあり、国宝に指定されている。

伊達 政宗はもう一つ城が欲しかったらしい。しかし、城を建てるわけにもいかないかったため、
要塞のような意味合いとして建てられたのがこのお寺ではなかったという説があると聞いたことがある。
城の替わりの寺という形式をとった建物だったが、政宗にとっては、重要な拠点だったのではないだろうかと寺の中を歩きながらそんな思いがよぎった。

 

 

本堂にお参りをして、お茶会の会場へ。

「瑞巌寺アート茶会」という”花とアートで再生復興プロジェクト”が主催したイベント。
震災後、石巻出身の佐久間 智子さんが被災地の復興と芸術を活用して心の復興をテーマに掲げ、活動しているプロジェクト。

 

大書院と呼ばれる大広間に赤い毛氈が幾枚も敷かれた中、そこを行き交う色とりどりの和服を着た女性たちが映える。裏千家も表千家も共に参加しているようだった。

床の間には石巻出身の現代書家・千葉 蒼玄氏の作品「復興に向けて」が飾られていた。
ブラックホールをイメージしたこの作品は、黒い三日月を囲む白い部分がひび割れながらも球体を形作っており、背景の墨の重厚なマチエールが書の枠を超えた作品として独特の存在感を醸し出していた。

 

お茶会が始まると来賓の紹介や松島市長・桜井 公一氏などの関係者の挨拶が続いた。
その中でも、現・利府町長の熊谷 大氏は、袴姿も凛々しく、お茶のお手前を披露しながら、自ら淹れた抹茶をふるまっていたのも印象的だった。
畳敷きの広間に心なしか、忙しくお茶を配る女性たちの衣擦れの音が響く中、大勢の人たちにお茶が運ばれてゆく姿をしばし眺めていた。

お茶会は第4組まであり、140名程の人たちは、代わる代わる振舞われたお茶と和菓子と茶会の雰囲気を満喫しているようだった。
私は第2組の回で、宙色JAPANのメンバーの幾人かと共に参加し、抹茶の奥深いほろ苦さを舌の上に感じ、そのお供の”しおがま”の落雁を久々に味わいながら、その素朴で温かみのある甘さにほっこりとした気持ちになっていた。

 

 

そして、参道のある一角にあるインスタレーション会場へ向かってみた。

サードパラダイスによるインスタレーション。

イタリアの現代美術家ミケランジェロ・ピストレット氏の考案したサードパラダイスというシンボル・マーク。左ー右、天ー地などを対峙するものの真ん中にある円を中庸=第3のパラダイス=平和・共生と意味づけ、その考えを軸とした記号のようなマークを描くようにその空間に配置するインスタレーション。世界各国でこのサードパラダイスによるインスタレーションが行われている。
そして、今回、東北の地から海との共生と世界平和への思いを込めて、3.11の復興のシンボルとして水嚢バックでサードパラダイスを象徴する形を作り上げる参加型のインスタレーションが執り行われた。

モノ派やミニマルアートの流れを組むような表現形態。
これは実用品を用いながらもそれらのものを配置することでその空間を変容させる芸術として60年代から70年代に起こった芸術表現の一つでもある。
ピスレット財団からイタリア人の女性アーティスト・サビーナさんが代表として来仙され、サードパラダイスの指針や活動などをお話しされていた。参加者は軍手をはめ、水の入った麻袋のような重い水嚢を何個か運び、みんなでサードパラダイスのシンボルを完成させた。

無限のマークの中心の間にもう一つ大きな円があるようなシンボル・マーク、それはとてもシンプルな形だったけれど、その中心の円の中でお能の演者・観世流の八田 達弥氏の舞いを見ながら、参道から吹き込んでくる冷たい潮風と揺れる木々の葉音のざわめきの中、一つの儀式のような雰囲気も感じられた。

屋外で自然と共に行事をするということは、古代から続くものでもあり、また、過去と現在とを結びつける何かがあるような気がする。そして、それは、祈りや鎮魂、そして、平和という意味合いに繋がるのは、いつの世も同じことなのだろうと思いながら眺めていた。

禅寺の建物の佇まい、早春を告げる花たちがほころぶ白梅の古木の幹のうねり、茶道の美しい所作、お能の凛とした舞、そしてインスタレーションの作り出すシンプルなフォルム。
さまざまな形を味わうように愛でることができた贅沢な一日だった。

[参考文献]

・瑞巌寺ホームページ http://www.zuiganji.or.jp/
・花とアートで再生復興プロジェクト https://www.facebook.com/earthandarts21/
・ピストレット財団 http://www.cittadellarte.it/

髙橋 典子/Noriko Takahashi

画家

岩手生まれ、宮城県亘理町在住。

2004年から個展活動開始。
個展、グループ展多数。

Horizon(水平線・地平線)をテーマに、日常の中、自己が感じたリアリティーを色彩に置き換えた半具象的な平面作品をミクストメディアで製作。

宮城県をベースとし、関東・関西でも展示。

2016年親かめ子かめにて個展「自然形象~Human as a part of nature」開催。

2016年、2018年、海外遠征グループ・宙色Japan「日仏交流展SUMI」(Espace Japon/フランス・パリ)に参加。

文筆作業として、河北新報・夕刊「まちかどエッセイ」にて連載。(2016.10〜2017.2)
また、2014年1月から、ブログ「My Horizon」を開始。絵の製作のことや日々、感じているモノゴトを綴っている。

”描くことと書くこと”に喜びを感じながら創作活動を行っている。

http://noriko-takahashi.hatenablog.com/

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