川沿いに細くくねる山道をひたすら車で走って、辿り着いた集落。
小高い場所に筆を祀る神社があった。
夫婦の欅の大木が出迎えてくれた宮城県丸森の筆莆神社。

筆甫という地名の中に”筆”という字があることから、筆の神社を建て、町おこしもかねて、平成9年に建立された。

油絵をやり始めた頃、そこで絵が上達するようにと願をかけ、住所と名前を書いてきた。毎年、開催された筆莆神社祭りの案内の葉書も送られてきていたが、訪れたのは一度きりだった。

 

そんな丸森が連日、報道されていた。
今年、秋の台風19号の甚大な被害は、まだ、その記憶も鮮明なままだ。

ニュースで筆莆地区の地元のおじさんたちが支援の手が届くのを待たず、身近にある重機を使って、瓦礫で塞がれた道を自らの力で、切り開いたことも大きく取り上げられていた。震災の時もそうだったが、地方のコミュニティの連携の力と生きるたくましさに感じ入った。

 

世界的に見ても今年ほど、地球変動という大きなうねりのような気象現象が頻繁に、そして集中して起こった年はないのではないだろうか。その動きの最も影響を受けている国がこの日本であると世界中が指摘している。

そして、気象変動と言えば、今年の地球温暖化サミットで演説したスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん。十代の鋭い感性で直感的にその危機感を感じ取り、世界中にメッセージを鮮烈に放った演説も忘れることができない。

自分の生活ということをやはり今一度、見直すことが必須であり、待ったなしの状態でもある。
自然災害が増える中、さまざまな選択をよぎなくされることも今後は身近で起こりえるかもしれない…。

 

 

令和元年。

元号が平成から、令和に変わった今年。神武天皇が即位した頃から数えて、およそ建国2680年という時間が経過しようとしているらしい。
世界的な歴史を辿っても建国の長さが1000年ほどの2位のデンマークと比べても圧倒的な長さを誇る国のようだ。

それほどまでに続く、希有な国・日本。
「苔の産すまで……」という歌詞が頭の中浮かんでくる。

 

そんな日本の神話『古事記』の中にこんな話がある。

天武天皇の祖先と言われるニニギミノミコト。
天照大神から命とお米の稲穂を与えられ、
「これを育て、収穫することで国民が争わず、豊かに暮らせるように。そして、愛と徳をもって国を納めて下さい。」と託されたそうな。
ニニギミノミコトは、高千穂の地に降り、当時の権力者に「あなたは今まで国を治めてくださいましたね。今後は、私が愛と徳をもってこの国を治めたいと思います。どうぞ国を譲ってください。」と申し出た。
権力者は戦の中でやっと勝ち得た天下であるため、そう簡単に譲りたくはなかった。
しかし、権力者はしばし考えた。
「自分たちの命を守ることができる安住の地を確保してくださるのであれば、国を譲りましょう。」と申し出てきた。

その安住の地が出雲大社になったいわれている。

 

この神話をもとに昔の大和ことばをひも解いてみると、力による支配を「うしはく」、愛と徳を持って納めることを「しらす」という言葉を使用していた。
「しらす」とは、「知る」が語源になっていて、力ずくでものごとを押し進めるのではなく、みんなで話し合って、どういうふうに進めていくかを決めてゆくことを意味しているとか。

 

これは、『和を持って尊しとなす』という聖徳太子の言葉の意味と通じるところがある。
「ちゃんと議論して、話し合った上で、ものごとを決めてゆきなさいね。」という先人たちの教えでもある。

 

もう誰かに任せておいて安心して暮らせるという時代はとうに過ぎ去ったような感がある。
今を生きている人たちがみんなで知恵を出し合い、話し合い、助け合い、支え合うことでしか成り立たないようなそんな世界へと移行してきている。

 

連綿と続くこの国には、他国にはない経験という学びがある。
その教訓を糧に得られた独自の発想によって、世界にさまざまな発信ができるのではないかといつも思ってしまう。他の国にはできないような提案や呼び掛けが…。

2020年、世界中の人たちが訪れることになるであろうオリンピック/パラリンピックというビックイベントが控えている。そこで日本はどんなメッセージを込め、打ち出し発信するのだろう…。

 

おもてなしの心も大切なことだが、大自然といかに向き合い、調和しながら生きていくのか、そして、多様化する個人の生き方へのおおらかで寛容な心、言論や表現の自由の中から生まれてくる新しい価値観、そして、柔軟な対応力が令和の時代には求められてくるのではないだろうか。

 

≪参考文献≫

「いいかげん人生術」秋山 佳胤・著(エムエム・ブックス)
「あわいの力~「心の時代」の次を生きる」安田 登・著(ミシマ社)
丸森観光案内所ホームページ http://marumori.jp/spot/fudejinjya/

髙橋 典子/Noriko Takahashi

画家

岩手生まれ、宮城県亘理町在住。

2004年から個展活動開始。
個展、グループ展多数。

Horizon(水平線・地平線)をテーマに、日常の中、自己が感じたリアリティーを色彩に置き換えた半具象的な平面作品をミクストメディアで製作。

宮城県をベースとし、関東・関西でも展示。

2016年親かめ子かめにて個展「自然形象~Human as a part of nature」開催。

2016年、2018年、海外遠征グループ・宙色Japan「日仏交流展SUMI」(Espace Japon/フランス・パリ)に参加。

文筆作業として、河北新報・夕刊「まちかどエッセイ」にて連載。(2016.10〜2017.2)
また、2014年1月から、ブログ「My Horizon」を開始。絵の製作のことや日々、感じているモノゴトを綴っている。

”描くことと書くこと”に喜びを感じながら創作活動を行っている。

http://noriko-takahashi.hatenablog.com/

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