新しい元号が発表されてからというもの令和フィーバーのように新しい二文字がメディアのいたるところを飾り、おめでとう!!が声高に叫ばれていた。
少々、騒ぎすぎの感も否めないが…。
けれど、さまざまな事柄が多様化している昨今、一つのことを共有できるビックイベントとして日本中が、年の暮れのように活気づいていた。
元号発表の日、テレビの前で、額縁に毛筆の文字が映し出された時、まったく予期していない漢字と音色に少し戸惑ってしまった。
国文学の中西 進氏が提案したとされる「令 和」。
中西氏は、「麗しき平和をもつ日本」という想いを込めたとコメントしていた。
「令」という字は、”命令の令や掟”を思い浮かべてしまい、なにやら窮屈な印象を受けたが、この元号には”麗しい”という意味として使われているようだ。
麗しいという字の意味を調べてみると、
気品があって美しいというイメージは、パッと浮かんでくるが、その他にも、晴れ晴れしたとか几帳面とか、正しく、間違いがないという意味まで含まれている。なんだかとても日本的な要素が詰まっているような気がした。
そして、「和」と言えば、聖徳太子の十七条憲法・第一にある「和をもって尊しとなす」が一番に浮かんでくる。
しかし、この中で使われている「和」の字は本来違っていたらしい。
ではどんな「わ」だったのだろうか?
聖徳太子の使った「わ」とは、「龢」という字だったという。
この「龢」の字の成り立ちを古代文字でひも解くと、竹を紐でまとめて息を吹きこむタイプの龠(やく)という楽器からきている形のようだ。
さまざまな音程を持つ笛を一緒に奏でることで、そこに調和を見出す。
それこそが”龢の関係”であるとした。
しかし、「龢」という字は次第に使われなくなり、「和」の方が一般的に使われるようになっていた。
現在、私たちが親しんでいる「和」というものの本来の意味は、和平や講和の「和」であり、軍事の前で戦争の終結を誓い合う儀式をあらわす用途として使用されたものだったという説もある。
今回の元号の参考文献は、中国からのものでなく、日本独自の万葉集からの典拠ということも話題にのぼった。日本独自のアイデンティティーのようなものを打ち出したと言っても過言ではない。
万葉集は、有名も無名も分け隔てなく、多くの庶民の良い句も選ばれ作られた。
これは、現代にも通じるところで、インターネットを介して、有名も無名も関係なく、ボーダレスに自分をアピールできる時代。その中から、新たに生まれる文化的可能性がさらに今後、発展するという予感も含んでいる。
改元前に新聞を眺めていたら、書家でアーティストの紫 舟さんが令和の時代へのメッセージとしてのインタヴューに応えている記事が掲載されていた。
『「和して同せず」の心で』と題されていた。
昭和時代の和とは、個性や自主性のない同調が前提にあった。
しかし、令和時代の和は、個性・多様性・自主性を持って、人と和する時代という解釈を示していた。
なるほどね…。
違いを面白がる時代と言ってもいいのかもしれない。
さすが世界で活動しているアーティストの発言には実感のこもった力が宿っている。
外務省ではこの令和の二文字を「Beautiful Harmony」と訳している。
AIや5Gなど高速なデジタルの波が日々、迫ってくる時代においてもなお、風流で抒情的なイメージを持ち続けようとする日本独自の精神性や神秘性のようなものを感じずにはいられない。
日本人が、自分自身の背景である歴史や文化を再認識して、それらをベースに新たな文化を発見し、さらに構築してゆく時代になるのかもしれない。
そして、多様性の中、お互いの違いを認め合う本格的な時代の到来となりそうだ。
*・゜゚・*:.。..。.:・*:.。. .。.:*・゜゚・*
〜お知らせ〜
令和元年5/1に始まったことがあり、この場を借りて、告知をさせていただきます。
5月1日から5月31日まで、東京の神楽坂にありますアグネスホテル東京のティーラウンジにて個展をさせていただいております。
自分の中のジャポニズム発見ではありませんが、江戸時代に活躍した絵師の作品を点描画で模写をする試みを今回はさせていただきました。
また、このアグネスホテルでは、ワインエイド!For East Japanというイベントも開催され、そのイベントの収益を東北の復興のため寄付していただいたということもお聞きしました。そのことへの感謝も込め、東北の復興と元気な東北ということをお伝えしたいと思い、宮城県の地元の海辺で見つけた樹木を題材にした「よみがえりの木」とい絵のシリーズも今回、製作し展示させていただきました。新緑の季節、自然に宿ったエナジーを感じていただければ幸いです。よろしければどうぞご高覧ください。
http://www.agneshotel.com/
………………………………………
〈コラム参考文献〉
・「日本人の身体」安田 登・著(ちくま新書)
・読売新聞 4/21朝刊
・朝日新聞 5/1 朝刊
髙橋 典子
画 家
岩手生まれ、宮城県亘理町在住。
2004年から個展活動開始。
個展、グループ展多数。
Horizon(水平線・地平線)をテーマに、日常の中、自己が感じたリアリティーを色彩に置き換えた半具象的な平面作品をミクストメディアで製作。
宮城県をベースとし、関東・関西でも展示。
2016年親かめ子かめにて個展「自然形象~Human as a part of nature」開催。
2016年、2018年、海外遠征グループ・宙色Japan「日仏交流展SUMI」(Espace Japon/フランス・パリ)に参加。
文筆作業として、河北新報・夕刊「まちかどエッセイ」にて連載。
(2016年10月から2017年2月)
また、2014年1月から、ブログ「My Horizon」を開始。
絵の製作のことや日々、感じているモノゴトを綴っている。
”描くことと書くこと”に喜びを感じながら創作活動を行っている。