とあることがあって、
ある人に手紙を書いた。
メールでもよいことなのかもしれないけれど、 ちゃんとペンを握って、便箋に思いをしたためたかった。 そんな欲求が突き上げてきたのだ。
遠い昔から、人は、相手に手紙を通して想いを伝えてきた。
和紙と筆、便箋とペンを使って、 気持ちの有り様を綴り、伝えてきたのではないだろうか。
どんな時代になっても、相手に気持ちを伝えたいという欲求には変わりはない。
しかし、近頃では、手で文字を書くことに関して、少しばかり危機感を感じている。
アルバイト先で、申し込み用紙に書かれてある文字に、一瞬、目が止まる時がある。
これはなんと読むのだろう?
達筆過ぎて読めないのではなく、
いわゆるミミズのはったような文字を見かけることが多くなった。
あまり文字を手で書くことをしていない人の文字なのだ。
失礼のないよう相手に文字の確認をして、その場を収める。
文字はスマートフォンやパソコンの普及で打つものとなってきていることが多くなってきている。
私も字は下手な方だが、第三者に伝える書面に関しては、なるべく丁寧に書くようにはしている。
老いも若きもにょろにょろとした文字、大丈夫か…?と感じてしまった。
キーボードを打つこと、スマートフォンで画面をタップすることに慣れ親しんだ指先にペンや筆を握って紙や和紙に書くことは新たな鮮度をもって蘇ってくる一つの感覚となってゆくのだろうか。今後、更にその鮮度は増す、そんな時代になってゆくのかもしれない。
美文字とまではいかないまでも手書きの魅力は確実にある。字が下手でも味わいのある文字を書く人もいる。この筆跡は、あの人そのものだなぁ…と感じてしまうこともある。
久し振りに手紙を書き、思いをやり取りする。
液晶画面をタップしながら、キーボードを叩きながら、 打つ文字でも伝わることも多い。
しかしながら、手書きの文字のアナログな感覚ともいうべき、 その人の心の温度や気配が紙面から立ち昇ってくるのを感じる。そして、その人の存在を身近に感じられることもある。
手紙というささやかなやり取りも大切にしてゆきたいと思う。
下手な文字でも想いを綴りながら伝えてゆきたいと…。
髙橋 典子
画家/ライター
1970年、岩手生まれ、宮城県亘理町在住。
2004年から個展活動開始。
個展、グループ展多数。
Horizon(水平線・地平線)をテーマに、日常の中、自己が感じたリアリティーを色彩に置き換えた半具象的な平面作品をミクストメディアで製作。
宮城県をベースとし、関東・関西でも展示。
2016年親かめ子かめにて個展「自然形象~Human as a part of nature」開催。
2016年、2018年、海外遠征グループ・宙色Japan「日仏交流展SUMI」(Espace Japon/フランス・パリ)に参加。
文筆作業として、河北新報・夕刊「まちかどエッセイ」にて連載。
(2016年10月から2017年2月)
また、2014年1月から、ブログ「My Horizon」を開始。
絵の製作のことや日々、感じているモノゴトを綴っている。
”描くことと書くこと”に喜びを感じながら創作活動を行っている。