【NORI COLUMN vol.04】春風の残り香

先月の凱旋祝賀パレードの記憶も新しいオリンピック金メダリストの王者・羽生 結弦くん。

私もテレビ越しで見たけれど、パレードに詰めかけた人、人、人。その熱気の渦が画面一杯に伝わってきた。

試合に臨む時の真剣な表情から、初々しく可愛らしい表情とさわやかな青年に戻っているような清々しい佇まいだった。

今年、最後の春風みたいに仙台の街を彩った一日だったように思う。

羽生くんと言えば映画「殿、利息でござる」で、当時の殿様である伊達 重村公を演じていた。

この物語は、宮城県大和町を舞台に実際に起こったことを映画化したもの。

江戸中期。仙台藩から重税を課せられていた小さな宿場町・吉岡宿。そこでは、破産や夜逃げが絶えなかった。
このままでは、宿場町の存続も立ちゆかなくなると危機感を募らせた商人・穀田屋 十三郎と同志たちが、藩に金を貸し付け、毎年の利息を住民に配るという”宿場救済計画”という前代未聞の事業を実現させようと奔走する姿を描いた物語。

本当ならこの大事業を行ったこともずっと秘めておいてくれとの約束だったが…。

震災後、これが映画化されたのもある意味必然だったのかもしれない。

この映画を観終わって、”陰徳”という言葉を想い出してしまった。

金銭的に少しばかり余裕のある者たちで、いかに共に暮らす人々の苦しみを減らし、潤うか、循環が生まれるかを思案し、自分たちの利益がさほど出なくとも平等に生活ができ、食うに困ることなく、ささやかな暮らしの中でもそれなりに楽しく暮らして行ければ、それで満足という”足るを知る”の精神を実行するかのような慎ましさがある。

その志しある姿は、現代から見ても美くしく感じられた。

映画の最後に登場する伊達 重村公から名を受けたお酒「春風」が羽生 結弦くんのオリンピック連覇を記念して復刻版として「殿の春風」というネーミングで発売されたという。

映画の中で出てくる酒造会社とはまた違う蔵元で造られたものだが、山田錦米を100%使用し、40%まで磨き上げた大吟醸。

先日、少しばかり試飲させて頂いた。

鮮やかな切れ味のあるスッキリとした飲み心地が印象的だった。

怪我から、見事、復活し、磨き抜かれた演技で見事に金メダルを取った羽生くんと磨き抜かれた大吟醸…。

共にキレのある醍醐味が光っている。

蘭亭の宴〜お酒にまつわる書・画のグループ展〜
2018年5月19日(土)、20日(日)、25日(金)、26日(土)、27日(日)

親かめ子かめ恒例の企画展。約30名の作家が「お酒」と「宴」をテーマに作品を製作し展示。

※10:00~17:00
※懇親会…5月26日(土)16:00~

主催…書ギャラリー親かめ子かめ/協賛…岡部工房/運営…小文ラボ
WEB…http://www.oyakamekokame.com/blog/rantei2018

髙橋 典子

画家/ライター

1970年、岩手生まれ、宮城県亘理町在住。

2004年から個展活動開始。
個展、グループ展多数。

Horizon(水平線・地平線)をテーマに、日常の中、自己が感じたリアリティーを色彩に置き換えた半具象的な平面作品をミクストメディアで製作。

宮城県をベースとし、関東・関西でも展示。

2016年親かめ子かめにて個展「自然形象~Human as a part of nature」開催。

2016年、2018年、海外遠征グループ・宙色Japan「日仏交流展SUMI」(Espace Japon/フランス・パリ)に参加。

文筆作業として、河北新報・夕刊「まちかどエッセイ」にて連載。
(2016年10月から2017年2月)
また、2014年1月から、ブログ「My Horizon」を開始。
絵の製作のことや日々、感じているモノゴトを綴っている。

”描くことと書くこと”に喜びを感じながら創作活動を行っている。

http://noriko-takahashi.hatenablog.com/