【NORI COLUMN vol.01】墨 縁

今月からブログで画家・ライターの髙橋典子さんのコラムを不定期で更新します。

親かめ子かめの理念「日本文化の継承・作家の育成」や企画展に関係するテーマに投稿していきますのでよろしくお願い致します。

墨 縁

初めて親かめ子かめに来たのは、確か2013年だったと思う。

ちょうどジャズミュージシャンたちの姿を収めたムーディーな写真展が開催されていた。

このギャラリーの第一印象は、”しっとりとした和の空間”。

当時、ハードな油絵を描いていた自分にとって、ここに自分の絵を飾るイメージは、正直、湧いてこなかった…。

しかし、知り合いの展示などもあり、何度か通っているうちに毎年、開かれている蘭亭の宴に参加するようになった。そして、その展示の懇親会の際に、パリ行きの企画が浮上した。

その日の午後、作品展間近で額装した作品をカートに積み、ガラガラと押して歩いている時、なぜかこんな思いが心の中、よぎっていた。

「こんな重さに耐えられないようでは海外になんて行けない!パリの道は、もっとひどい石畳のはずなんだから・・・!」

パリに行く予定なんてないのに、行ったこともないのに、自分に叱咤している私がいた。

その企画の呼び掛けに、先立つものも考えず”行きます!”と即答。日本酒の力も借りて、返事だけは元気なものだった。

しかし、行ける条件は墨で作品を作ること。

墨かぁ・・・。

墨は、ちょっと作品に深い黒が欲しくて墨汁を使った程度で、ほとんど触れていなかった。そんな自分にどんな作品ができるのだろう?使い慣れない画材で作った作品をパリで展示するという、無謀さ…。油絵から、墨と水を使うことやキャンバスから和紙を使うことのあまりの違いにとまどい、どうにも形にならなず悪戦苦闘する日々が続いた。


日常地平線〜風がとどまる場所〜

しかし、震災復興のお礼も兼ねた展示であることもあって、震災後に描いた作品と共に、なんとか墨によって描き上げた点描による作品をスーツケースに詰め込んで、パリへと持って行くことができた。

そして、帰国後、墨をメインとした点描画による展示をこのギャラリーで行うまでに至った。

縁とは本当に不思議なものだ…。


銀河〜GALAXY〜

墨という素材を通じて、見えてきたものもある。

それはまだ、氷山のほんの一角に過ぎない…。

知らず知らずのうちに東洋の文化の中へ足を踏み込み始めいている自分がいる。

手探りではあるが、ジャンルにとらわれない自分なりの墨の使い方を模索してゆけたらと思っている。

髙橋 典子

画家/ライター

1970年、岩手生まれ、宮城県亘理町在住。

2004年から個展活動開始。
個展、グループ展多数。

Horizon(水平線・地平線)をテーマに、日常の中、自己が感じたリアリティーを色彩に置き換えた半具象的な平面作品をミクストメディアで製作。

宮城県をベースとし、関東・関西でも展示。

2016年親かめ子かめにて個展「自然形象~Human as a part of nature」開催。

2016年、2018年、海外遠征グループ・宙色Japan「日仏交流展SUMI」(Espace Japon/フランス・パリ)に参加。

文筆作業として、河北新報・夕刊「まちかどエッセイ」にて連載。
(2016年10月から2017年2月)
また、2014年1月から、ブログ「My Horizon」を開始。
絵の製作のことや日々、感じているモノゴトを綴っている。

”描くことと書くこと”に喜びを感じながら創作活動を行っている。

http://noriko-takahashi.hatenablog.com/